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つい、らくだが一気読みしてしまった本をご紹介します。
第32回 横溝正史ミステリ大賞の受賞作品
『デッドマン』 河合莞爾
です。
冒頭からオチまでミステリアスな展開で、ページをめくる指がとまりませんでした。
以前「驚きのミステリートリック 其の1」でご紹介した、島田荘司先生の【占星術殺人事件】をオマージュした作品ですが、驚きの展開に唸ること間違いなしです。

今流行りのゾンビものやな

フランケンシュタインが近いですね
『デッドマン』のあらすじ

頭のない死体、胴体のない死体‥‥‥。
身体の一部が欠損した6つの死体が、次々と発見される猟奇殺人事件が発生。
そんな中、鏑木警部補率いる捜査班に1通の奇妙な電子メールが届く。
「僕は持ち去られた六人の死体のパーツを繋ぎ合わされて蘇った死人です。僕達六人を殺した犯人を見つけてください」差出人名は「デッドマン」
鏑木捜査班は、この奇妙な情報提供者からのメールを手がかりに捜査を進めるが、そこに書かれていた情報は、すべて四十年前の情報だった。


やめとくわ

あなたの片手が、ぽろりと落ちました。
するとその手を、誰か別の人が拾って持ち去ろうとしました。
さて、この手は誰のものでしょう?


この落ちた手は、勿論あなたのものです。
何故なら、人間には自己所有権があるからです。
だからあなたは、あなたの手を拾った誰かに、あなたの手を返すように求めることができます。


あなたの頭が、ぽろりと落ちました。
するとその頭を、誰か別の人が拾って持ち去ろうとしました。
さて、この頭は誰のものでしょう?

ひっかけ問題やな?
頭と胴体のどっちを、人間の主体とみなすかっちゅう話やろ。
そうやな、え〜
胴体を人間の主体とした場合はやな‥‥‥

なぜなら、頭が取れると、人間は死にますから。
死んだらその人は、法律上人間ではなくなり、ただの物体になる。
そして、死体という物体の所有権は法律上は遺族にあります。

「占星術殺人事件」も、ちょっと紹介

もともと島田荘司作品が好きだったという河合先生は、『占星術殺人事件』ぐらいの迫力ある作品を書けなきゃデビューはできない!という熱い思いがあり、『占星術殺人事件』をモチーフに『デッドマン』を書き上げられたそうです。

そういえば、以前に紹介しとったな

「驚きのミステリートリック 其の1」で
島田荘司先生の「占星術殺人事件」をご紹介しましたね
この記事は広告を含みます今回ご紹介する本は、島田荘司(しまだ そうじ)先生の占星術殺人事件ですころんなるほどなるほど水晶玉で犯人を見抜いたりするんやならくだいえ、違います理路整然とした本格ミステリーです安[…]
ですが本作は、バラバラ殺人とアゾートという題材を扱いながら、全く違う方向へと展開してゆきます。(もちろん「占星術殺人事件」を既読でなくても全然大丈夫です)
横溝正史ミステリ&ホラー大賞

横溝正史賞
1980年につくられた、角川書店主催の公募新人文学賞です。
第1回は横溝正史ご本人も、審査員として名を連ねておられますが、数ヵ月後に結腸癌のためにお亡くなりになっています。
その後、横溝正史ミステリ大賞と名を変え、2019年より、日本ホラー小説大賞と統合され、横溝正史ミステリ&ホラー大賞という名称で運営されています。

横溝正史先生は、江戸川乱歩先生の編集者をされていた時期があったんです


ゴーストライターをされたことがあったそうです

ネットニュースもんやで!
「あ・てる・てえる・ふいるむ」を
横溝正史先生による作品であることを公表されています。

河合莞爾先生も某出版社で編集者をされているんです

横溝正史の再来やないか!
綾辻行人先生の選評
横溝正史ミステリ大賞で、本作を推した選考委員の綾辻行人先生の選評が、後書きの解説に載せられています。
「島田荘司『占星術殺人事件』の『アゾート殺人』に酷似した連続猟奇殺人を正面から取り上げ、さらには同じ島田荘司の『眩暈』的な趣向をも取り入れながら、リーダビリティの高いミステリエンターテインメントとして、うまく作品をまとめあげている。
”who?” よりも ”how?” ”why?” が謎の中心となる構造だが、かの名作にこのような角度から挑んだ心意気や良し、と見る」
とあり、『占星術殺人事件』の題材を取り入れたことを、大きく評価されています。
続編も非常にミステリアスな作品ですので、ぜひ手にとってみてください。