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今回は本格ミステリーが再興するきっかけとなったムーブメントの旗手、綾辻行人さんをご紹介させていただきますいただきます。
綾辻先生といえばデビュー作の『十角館の殺人』が有名ですが、館シリーズのような本格ミステリーだけでなく、ホラー文学の世界でも本格度の高い作品を発表されているんです。
あの秀逸な『仕掛け』は一体どこからやってくるのでしょう
綾辻行人先生の知られざる魅力に迫ります。
京都大学推理研究会

綾辻先生といえば、京都大学の推理小説研究会に所属されていた事が有名ですが、奥様で人気作家の小野不由美先生も、研究会の同期だったそうです。
他にも法月綸太郎、我孫子武丸、円居挽、摩耶雄崇、大山誠一郎とビッグネームが研究会の出身者として名を連ねている為、恐ろしくスパルタの虎の穴かと思いきや、意外とプロ志向の方は少ないそうです。他大学の方もウェルカムだそうなので、京都の大学生は門戸を叩いてみてはいかがでしょうか。
研究会は毎週の例会があるそうです。そして月に1回、そこでひらかれる有名な『犯人当て』というプログラムは、会員が自ら創作した本格推理小説の問題篇の原稿を配り、犯人当てのディスカッションをした後、全員で正解篇を読み作品や犯人の是非を問うという、なかなかシビアな創作活動です。
もちろん、綾辻先生も必死で創作されたそうで、26才の若さでデビューされたのも、研究会での創作活動があったからでしょう
らくだのオススメ作品

初期の頃は、活字にこだわって叙述トリックものを、と意識して作られたそうです。そのこころざしが強く感じられる作品として、らくだがオススメしたいのが、『どんどん橋、落ちた』です。
らくだはこの本を読んで、『犯人当て』におけるアンフェアギリギリというのものが、こういう発想を指すのかと驚きました。
よくもこんなに突飛なプロットを思いつけるものですね。もちろん各解答篇では全てが理路整然と謎解きされます。ヤラレタと言うこと間違いなしです。
そして、らくだが最もガツンとノックアウトされた作品が
本格学園ホラー小説 『Another』です。
これほどロジカルに謎を取り入れたホラー作品は、日本人の作品では珍しいのではないでしょうか。超自然のホラーでありながら、ミステリーを見事に融合させた大作ですね。アニメ化されたり、山崎賢人くん主演で映画化もされました。
そしてスピンオフ作品のAnotherエピソードSを経て、3年後の災厄が描かれた『Another2001』が現在、野性時代にて連載中です。(2019年現在)
さらに四部作として、なんと『Another2009』まで構想があるそうです。
楽しみに待ちましょう。
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辻村深月さんとの親交

綾辻先生の大ファンとして有名なのが、同じく作家の辻村深月先生です
あまりに好きすぎて、ペンネームに綾辻先生から「辻」の一字を拝借されたそうで「もし願いが一つ叶うなら、綾辻先生の本の記憶を全て消して、もう一度全て読みたい!!」と言われるほどですから、筋金入りの綾辻信者ですね。
辻村先生が小学生の時に『十角館の殺人』を読んで以来、熱烈なファンとなった事は有名ですが、十角館の大オチを読んだ時に、本を落としてしまうほどの衝撃を受けたそうです。
辻村先生がインタビューで「十角館を読んだ時に、小説ってこんなスゴイ事ができるものだと初めて知って、とても驚いたんです」というコメントがありました。
ところが驚くことに、綾辻先生も同様の経験をされていたそうなんです。
若き日の綾辻先生自身も、当時隆盛を誇っていた松本清張以降の社会派ブームが肌に合わないと感じていた折、連城三紀彦や泡坂妻夫の作品に出会い「現代でもこういうやり方で、こんなに面白い本格ミステリーを書けるのかと驚いた」とおっしゃっているんです
またお二人の親交も古く、綾辻先生への熱烈なファンレターを送ったことに始まり、辻村先生が中学生の頃には、Anotherの人物設定である中学生心理の参考として、綾辻先生から辻村先生へ電話取材をされたこともあるそうです。
やがて辻村先生は、憧れの綾辻先生の背中を追いかけるように、千葉大学のミステリ研究会に入部。
その後、高校生の頃から描き始めた大作をメフィスト賞に応募、そして受賞。作家となってからも見事に直木三十五賞を受賞されました。
そんな今でも、辻村先生の言葉越しに、綾辻さんの偉大さが語られることは少なくありません。
「綾辻さんの表現される洗練された美しさや闇は、同じ書き手として真似ができない。でも自分がそうありたいと思う偉大な目標」とおっしゃっています
ちなみに辻村先生も、綾辻先生の作品でAnotherが一番好きな作品だそうです。
今後の展望

日本の文学界で栄枯盛衰を経た本格派推理小説は、彷徨いながらも時代ごとに奇才を産み落としてきました。
江戸川乱歩然り、横溝正史、泡坂妻夫、島田荘司、綾辻行人、その種を絶やすことなく本格派推理小説の脈絡を紡いできた作家達のDNAは、次なる本格派の旗手を担う若手作家達に受け継がれつつあります。
でも綾辻先生は、まだ突っ走ります。
綾辻先生は現在58歳だそうですが(2019年現在)先ほど書いたように、Anotherは第4部まで構想があり、館シリーズも第10作の構想をされていますが、11作以降も元気ならポツポツ書こうかな、ともおっしゃっています。
ペースに関わらず、いつまでもハイクオリティな本格推理小説を書き続けていただき、読者を驚かせてもらいたいですね。